◇◇◇
雫玖の一回忌を終え、その数日後。
突然空人から海へ来るように呼び出しをくらい、土曜日のお昼にわざわざ外へと向かう。
「…空人?わざわざ呼び出して何の用?」
お互い家近いんだから直接家に来た方が早いのに。
そう思いながら海面の近くに居る空人の後ろ姿に話しかけた。
「わざわざ悪いな」
「何?もう。もうちょっと寝てたかったのに」
「ぐぅたらすんなよ。太んぞ」
「余計なお世話」
手元には四角い何かのケースがあった。
「この前の一回忌の時、雫玖のお母さんから渡された。……これ、海にって」
「……え、なにこれ」
カポ、とケースを開けるとそこには指輪が差し込まれていた。
太陽の光を浴びてキラキラと光っている。
「なんで、こんな…」
「ごめん、海」
「え?」
「……多分、俺のせいだ」
穏やかな波に似つかない少し強い風。
おかげで髪の毛が色んな方向に舞ってまとめるのが大変。
空人の声がそんな風の中冷たく響いた。
「雫玖が死んだの、多分俺のせいだ」