「…雫玖さ、この海好きだったんだよね」

「知ってる。よくここに居たよな」

「特に日の出の瞬間が好きだったみたい」

「ふはっ、案外ロマンチストなの?あいつ」

「見たかった」

「……おう」

「一緒に、見たかったなぁ…」



震える声で無理矢理笑いながら言うと、空人は私の肩を抱いて落ち着かせようとしてくれる。
それなのに、視界は揺れてポロポロと涙がこぼれ落ちる。



「お前、朝起きれんの?」

「…何よ」

「苦手じゃん、早起き」

「できるし、舐めんなっつの」

「いや無理だろ」

「それ雫玖にも言われた!」



幼なじみだからお互いの事をよく分かってる。
…私は、雫玖の事をどれだけ分かってあげれたんだろう。

足元に居るユキチがもう待てないとでも言うように起き上がってしっぽをパタパタとさせている。



「そろそろ行くか、」

「うん」



空人の言葉の意味が分かったのか、わふっわふっと嬉しそうに鳴いている。



「………ごめんな、」

「何が?」

「雫玖じゃなくて、俺が生きてて」

「何言ってんの」

「……だよな、ごめん。何言ってんだろ、俺」

「どっちが居なくなるのも私は嫌だよ」



だからもう二度とそんな事言わないで。
ごめん。


なんだか最近の私達は謝ってばかりだ。