空人の家はお母さんが単身赴任中で、今はお父さんと2人暮らしだ。
おばさんはたまに帰って来ているようでたまに空人と一緒にユキチの散歩をしているのを見かける。
「…今日、空人は?」
「ん?あー、体調崩してるみたいでね」
苦笑いのおじさんに違和感を感じつつも、体調が悪いならとそのまま大人しく家に帰った。
普段、元気でしつこい奴が体調を崩して静かだとこっちまで調子が狂ってしまう。
お風呂に入ろうと部屋のカーテンを閉めようとした時、窓からユキチを散歩する空人の姿が見えた。
「えっ、ちょっと海?こんな時間からどこ行くのっ?」
「空人の所」
「スマホ!せめてスマホ持ってって!」
「持ってる!」
部屋着の上に薄いカーディガンを羽織って、サンダルのままいつもの散歩コースを追う。
「っ、は、空人!」
「え、海?」
「ぅわあっ、」
空人の名前を呼んだ瞬間、一緒にユキチまで振り返ってしっぽをブンブン振り回しながら勢いよく飛び付いてきた。
「おいこら!急に飛び付かねぇの!」
飼い主の意に反してワフワフと言いながらしっぽを振り回すユキチは無邪気で可愛らしい。