「海」

「っ、びっくりした…。何?」



私の名前を呼んだのは空人だった。
私の席の横に立って見下ろしている。



「ボーッとしてたから」

「あぁ、」

「体調悪いなら保健室行くか?」

「大丈夫、悪くないから」

「それならいいけど」



周りを見るといつの間にか授業も終わっていて、皆それぞれ休憩時間を過ごしていた。



「次、現文」

「はいはい」

「………なぁ、」



鞄の中からルーズリーフの1枚を取って机に出す。
なぁ、の次を言わない空人を見上げると、何かを考え込むようなその表情に「どうしたの」と声をかけそうになった。



「今度の雫玖(シズク)の一回忌、来るよな?」



声をかける前に、そう空人が言ったから。
“一回忌”という言葉に体が固まってしまう。

そしてまだ受け入れきれていない私には重い言葉だった。