3度目の再発

これもまた、人生の波に翻弄され、三度目の闘いに挑む男の物語でございます。

今度の発作は、過去の二度に勝るとも劣らぬ試練。仕事場で機械がトラブル続きだったのに、突然何事もなかったかのように動き出した瞬間、男の頭の中に常識を超えた妄想が芽生えました。「俺の頭の中で自動車産業のラインが動いているんだ。俺の思念次第で、ラインは止まりもするし、動きもする…」そんな馬鹿げた考えが彼を襲い、突然の発作に倒れてしまったのでございます。

義務教育も、高校も出ている男が、なぜこんなことに――そんな思いが彼をさらに苦しめ、アパートへと戻るや否や、妄想は次々と膨らんでいきました。「この場所に、ミサイルが落ちてくるんだ!」と信じ込み、部屋中にある物を積み木のように並べ始めたのです。まるで子供のように。だが、その行為は彼にとってはミサイルを撃退するための真剣な対策だったのです。彼は全ての行動をはっきり覚えている、と語ります。

その後、愛車に乗り込み、頭の中が妄想に支配されながら岐阜の風俗街を目指しますが、何をどうしても辿り着けません。結局、同僚の住む寮まで車を走らせ、カーステレオをガンガン鳴らしながら寮を一周するという行動に出ました。これもまた、頭の中の妄想の一部であり、彼には理性のかけらも残っていなかったのです。

アパートに戻り、食事の席で彼の耳に届いたのは同僚たちの声。「奴は突然、頭がおかしくなるんだよ」という陰口。しかし、彼は黙ってその声を聞き流しながらも、頭の中ではますます被害妄想が膨らんでいくのでした。次に待っていたのは、会社の事務所で両親の到着を待つ、恐怖に震える夜。彼は毛布に包まりながら、東京から大火事が発生し、それが名古屋に向かっているという妄想に怯え続けました。

両親が夜中に到着し、彼を泊めてくれる宿を探すものの、どこも開いておりません。やむなく、彼は母親と共に警察署に頭を下げて一晩泊めてもらうことになりました。だが、そこでも彼の妄想は収まりませんでした。缶ジュースのバーコードに目を凝らし、太い線、細い線に世の中のリズムが反応していると信じ込んでいたのです。

翌朝、彼は再び病院の独房室――いや、保護室へと閉じ込められることになります。今回は妄想の影から抜け出すのに2週間を要しました。だが、病院内では彼は元気そのもので、退院の許可が出る前から何度も手紙を書き、両親に迎えに来てもらうよう頼み続けました。

しかし、家路に就く途中でさえ、彼の妄想は完全に消え去ってはいなかったのでございます。この三度目の試練も、男にとってはまた一つの人生の波――乗り越えるべき大波であったのです。

浪花節に語るこの物語、三度目の再発もまた、人間の脆さと強さ、そして闘い続ける意思を見せつけるものでございます。どんなに深い谷底に落ちようとも、男はまた立ち上がる。それこそが、真の浪花節の心なのでございます。