2度目の再発

これは、人生の波に翻弄されながらも、何度も立ち上がろうとする一人の男の物語でございます。

都会から少し離れた、自然豊かな田舎町で、男は穏やかな日常を送っておりました。自転車やバスを使って会社に通い、プリント基板を作る仕事に励んでおりました。会社は某大企業から独立した新興企業、仕事は順調、環境も良好、何も問題はないように見えたのです。しかし、その日は突然やって来たのでございます。

お昼を過ぎ、暗室での作業に没頭していると、何かが胸の中で不気味に動き始めました。「何かがおかしい」――そう感じた男は、ついに我慢ができなくなり、仕事場を飛び出してしまったのです。バスに飛び乗り、部屋へと急ぎますが、車内では更に奇妙な現象が起きました。乗客の顔が、なんと母親に見えるではありませんか。妄想が彼を襲い始め、ついに現実と幻想の境が溶け出してしまったのです。

部屋に戻った男は、祖母からのハガキを手に祈りました。「どうか、何事も起こりませんように」と。しかし、その祈りも空しく、深夜ラジオから流れてきた一言が彼の理性を揺るがしました。「あの世からなーんちゃって」。それを聞いた瞬間、男の頭の中で何かが崩れ、彼は奇妙な行動を取ることになります。

スーツに作業着を重ね、外へと飛び出した男は、六本木の街を彷徨い歩きました。何かを、誰かを待っている、しかし何も起こらない。そんな中、次は目黒へと向かい、あるマンションで彼女が待っていると信じて部屋のドアを叩きましたが、出てきたのは全く知らない人物でした。夜は更け、男は再び電車に乗り、上野へ、そして無銭乗車で大宮へと向かいます。

大宮駅のロビーで大きな絵に見入る彼の頭の中では、すでに現実と非現実の境が曖昧になり、ついにスーパーマンのような気分になってしまいました。そして、品川駅にて、電車に飛び込もうとしましたが、土壇場で思い留まりました。それでも駅員に捕まり、最終的に会社の社長に救われたのです。

理性を失い、被害妄想に飲み込まれてしまった男は、再び独房へと送られました。2度目の発作、2度目の入院、それでも彼は希望を捨てず、ふたたび立ち上がりました。東京で多くの友と別れ、九州へと帰った男は、その後5年間、穏やかな日々を送ることができました。

人生という名の戦場で、苦しみの中をもがきながらも、一歩ずつ歩み続けるこの男の姿に、私たちは何を学ぶのでしょうか。どんなに深い谷に落ちようとも、人はまた立ち上がる――それが、浪花節に通ずる、人間の強さなのでございます。