ディアンヌの熱意に押されてか、マリアたちも渋々納得してくれたようだ。
料理人たちもピーターのことを気にしてか、マリアの説得もあり、なんとか調理場を貸してもらえることになった。
ディアンヌは目に見えて体の細さが目立つようになってしまったピーターのために、料理を作ろうと思っていた。
料理人たちもピーターがほとんど料理を口にしないことに責任を感じているらしい。
積極的にディアンヌを手伝ってくれている。

実はディアンヌもここ最近、ベルトルテ公爵家の料理が豪華すぎるため、胃もたれしていた。
徐々に食べる量は少なくなっていき、シンプルなパンとスープに手が伸びる。
慣れていれば当たり前なのかもしれないが、素朴な食事を食べて育ったせいか、シンプルな家庭の味が懐かしくてたまらない。
中にはカトリーヌに肩入れしているシェフもいるのか、ディアンヌを見ては気まずそうに視線を逸らしている。

(……この人、カトリーヌに言われて嫌がらせしていたシェフかしら。でも今はピーターのことが優先よね)

ディアンヌはメリーティー男爵家から届いた段ボール箱から大量の野菜を切っていく。
前世と今世を含めて毎日、七人分の料理を作っていたため手際がよい。
鍋に水を張ってから火にかけて、次は小麦粉と水と塩を混ぜて発酵させパンを作っていく。
少し固いが、これがスープによく合うのだ。
ぐつぐつと煮たつ鍋に野菜とソーセージを入れる。
チーズを切ってから皿に並べた。
スープに塩を加えて煮立てていく。
あっという間にシンプルな野菜スープの完成である。
パンも焼き上がり、トレイの上に並べていく。