シャーリーは機嫌が治ったようだ。
怒りに歪めていた顔がにっこりと笑顔になる。


「あなたに似合うドレスは……そうだわ! フフッ、これなんかどうかしら」

「……!」

「今のあなたにはピッタリよねぇ?」


濃い紫色のドレスは装飾は少なくシンプルだ。
艶やかでトロミのある生地に胸元も開いて露出度も高く、デザインも大人っぽい。
ディアンヌの想像していたドレスとは真逆なものだった。


「これならコルセットも必要ないし、侍女がいないあなたでも着られるでしょう?」

「…………え?」

「あと……これもわたくしには似合わないから、あなたにあげるわ」


シャーリーはニタリと唇に歪めながら、ハイヒールと濃い紫色のドレスを渡す。
有無を言わせない態度にディアンヌは折角の好意を無下にできないと受け取るしかなかない。


「あ、ありがとう。シャーリー……このドレス、ちゃんと返すわね」

「あら、こんな安物いらないわ……だってあなたのために用意した特別なものなんだから」

「……何か言った?」


シャーリーの呟くように言った声が聞こえずに、彼女に問いかける。


「またドレスを貸してあげるから遠慮なく言ってちょうだい?」

「ううん……今回だけで大丈夫よ。シャーリー、ありがとう」

「あら、そう? どういたしまして」