そして足も動かせるほどよくなり、ベルトルテ公爵邸に来て、初めてピーターと共に夕食を一緒にしていた時だった。
心配そうにこちらを見ている料理人や給仕たちを見てディアンヌは不思議に思っていた。

(……どうしたのかしら)

目の前のテーブルに並べられていく豪華な料理の数々を見てディアンヌは目を輝かせていた。
豪華な料理はメリーティー男爵領でも食べることはできなかった。
前世でもギリギリの生活だったため、縁がなかった。
まるで夢でも見ているようだ。よだれが止まらない。
ディアンヌが喜んでいるのとは違い、何故かピーターは浮かない顔をしている。
そして料理がテーブルいっぱいに並べられる。
ピーターは料理に手をつけることなく、すべて残してしまっているではないか。
今もちびちびとスープを飲んでいるだけ。
ディアンヌはピーターのことが気になり問いかける。


「ピーターはこの中に嫌いなものがあるの?」

「……ううん、違うよ」


ピーターは首を横に振る。
そしてパンを半分だけ食べていた。

(偏食……というのとは、少し違うような気がする)

ピーターは美しく飾り付けられたデザートにも手をつけることもない。
というよりは、ディアンヌが食べ終わるまで待っているようにも見えた。