「正直、ピーターは引き取ったのは彼をベルトルテ公爵家の後継にしようと打算的な部分もあった。そうすれば結婚する必要はないと……」

「…………」

「しかし私は親になるにはまだ早かったようだ。未だにピーターを理解できず、彼の悲しみも癒せないままだ」

「リュドヴィック様……」

「打算的な私を、君は軽蔑するだろうか?」


困ったように笑うリュドヴィックを見て、ディアンヌは小さく首を横に振った。
まだ少ししか時間を共にしておらず、わからないことも多い。
けれど、リュドヴィックは正直な気持ちを話してくれた。
下手な嘘をつかれるよりも、ずっと誠実に思える。

(冷たい印象だったけど、イメージとは違うのね……たしかに打算的な部分はあるけど、ピーターのことをちゃんと考えてくれてるんだわ)

絶対に嫌だと思っていた結婚もピーターのために決めたのだ。
ディアンヌにはピーターを大切に思い、寄り添おうとしているように見えた。
契約結婚を提示してきたのも、そのような経緯があったようだと思うと納得してしまう。
それにディアンヌは前世でも今世でも五人姉弟の長女だ。
小さい子の扱いには多少なりとも自信がある。
ピーターのことも力になれるかもしれない。


「もちろん契約ではあるが生活は保証するし、君たちを守る」

「……!」

「ただ、私からの愛だけは期待しないでほしい」


リュドヴィックは困惑したように視線を逸らしている。

(……リュドヴィック様は優しい人なんだわ)