「お互いを助け合う契約結婚とするのはどうだろうか?」


リュドヴィックの言葉にディアンヌは大きく目を見開いた。


「──よろしくお願いしますっ!」


ディアンヌは間髪入れずに、その申し出を了承したのだった。
床に頭がつくほどに勢いよく頭を下げた。


「リュドヴィック様、ありがとうございます……!」

「ふっ……ははっ」


リュドヴィックのフッと息を漏らすような笑い声が聞こえて、ディアンヌは顔を上げる。

(リュドヴィック様はこんな表情もするのね……意外だわ)

ずっと冷たい印象だったが、今は少しだけ表情が柔らかい。
リュドヴィックは今から早馬でメリーティー男爵やロウナリー国王に手紙を送るそうだ。

(リュドヴィック様、仕事が早いわ……)

リュドヴィックの端正な顔立ちを見つめながら感心していた。
自分も彼のために役に立たなければと決意する。
ふと窓ガラスに映るリュドヴィックと自分を見ると明らかに使用人と貴族、といった感じだ。
客観的に見ても可愛らしい令嬢のディアンヌではあるが、リュドヴィックの高貴さと周囲を圧倒する美しさには敵わない。
家柄や身なりからして釣り合うのかと不安があったディアンヌは、リュドヴィックに問いかける。