「ピーターを連れて行ってくれ」


リュドヴィックの言葉にマリアとエヴァが頷いた。
しかし二人だけではピーターが運べずに執事も加わって、ピーターはディアンヌから引き剥がされてしまう。
ピーターは暴れながら泣いて、ひどい有様だった。
マリアやエヴァも優しく声をかけるが、彼には届いていないようだ。


「ディアンヌがいいっ! ディアンヌッ」


周りの様子からするに、日常茶飯事なのかもしれない。
彼はライやルイ、レイと同じ歳なのだが、振る舞いが子どもっぽく見えてしまう。
ディアンヌの寝巻きの胸元の生地は、ピーターに引かれてビロビロに伸びてしまったようだ。
リュドヴィックは再び大きなため息を吐く。


「ディアンヌ嬢、昨日からすまない。すぐに着替えを……」

「いえ、構いません。わたしは大丈夫ですから。こちらこそこんなによくしていただいてありがとうございます」

「……」

「足がこんな状態で馬にも乗れず、家にも帰れなかったので助かりました」


ディアンヌはリュドヴィックに深々と頭を下げた。
ピーターのことが心配ではあるが、今はリュドヴィックの話を聞き、お礼を言うのが先だろう。
リュドヴィックが何も言わないのを不思議に思い、頭を上げると彼は目を丸くしてディアンヌを見ている。
ディアンヌも見つめ返していたが、咳払いしたリュドヴィックは視線を逸らす。