「よかった……ディアンヌがいなくなったかと思った!」


ぐりぐりと食い込んでいく頭に叫び声も出ないまま、ディアンヌは苦しんでいると……。


「ピーターッ!」

「あ、リュドだ……!」


名前を呼ばれたピーターは顔を上げてリュドヴィックを見る。
ピーターは昨日と同じように、ディアンヌにぴったりと体を寄せたまま動かない。


「やはりここか。ディアンヌは怪我をしているんだ。もう少し休ませて……」

「じゃあ、ボクも休む……!」

「……ピーター」


ディアンヌはリュドヴィックの声がしたため、起きあがろうとするもののピーターの重みで体を起こせない。
腹部にはピーターの頭や腕が食い込んでいく。


「ピーター、ディアンヌと話があるから離れてくれ」

「嫌だ! ボクはディアンヌと一緒にいる」


まるでどこにも行かせないと言わんばかりに、ピーターの力が強まる。


「……ピーター、いい加減にしろ」


リュドヴィックは深いため息を吐く。
ディアンヌは腹筋を使い、ピーターを抱えながら起き上がるが、ここであることに気づく。
リュドヴィックの目の下にはまだ深い隈があった。

(リュドヴィック様、眠れなかったのかしら……)

ディアンヌがそう考えていると、ピーターのディアンヌの寝巻きを掴む手がわずかに震えている。
しかしリュドヴィックは苛立っているのか、口調は荒くなっていく。