マリア、という名前もアンジェリーナがつけてくれたそうだ。
アンジェリーナを一人で行かせてしまったことを今でも後悔していると語った。
そして彼女がいつ帰ってきてもいいようにと、侍女長にまで登り詰めたらしい。
この若さで侍女長を任せられるくらいだ。マリアの努力を窺える。

マリアは泣きそうになりながらもそう語った。
彼女の悲しみに寄り添おうとディアンヌはマリアの手を握る。


「アンジェリーナ様はマリアさんのことが大好きだったんでしょうね」

「え……?」

「大切だからこそだと、わたしは思います。家族を守ろうとする気持ちはよくわかりますから」

「……っ、ありがとうございます。ディアンヌ様」


マリアは目に涙を浮かべながら微笑む。
そして彼女の息子であるピーターを守りたいと思っているそうだ。


「それにディアンヌ様とアンジェリーナ様は雰囲気や性格がよく似ている気がします」

「わたしがですか?」

「えぇ、だからピーター様がディアンヌ様のそばを離れないのだと思います。私もディアンヌ様を見ているとアンジェリーナ様を見ているようで懐かしく思いますわ」

「…………マリアさん」

「アンジェリーナ様は人のために動けるとても優しい方でした」