マリアはディアンヌの足を見て、困ったように笑みを浮かべた。
包帯には先ほど歩いてしまったからか、傷が開きほんのりと血が滲んでしまう。
マリアと談笑しつつも、ディアンヌは軽食を食べていた。


「私はディアンヌ様を歓迎いたしますから。ベルトルテ公爵邸で過ごす際、困ったことがあったらなんでも言ってくださいね」

「どうしてマリアさんはわたしの味方をしてくれるのですか?」


そう言うとマリアは手を止めて、悲しそうに笑いながら口を開いた。


「私はピーター様の母親……アンジェリーナ様の侍女だったんですよ。アンジェリーナ様は街で捨てられていた私を救ってくださり、皆の反対を押し切ってベルトルテ公爵邸に置いてくださったのです」

「……マリアさん」

「殺伐としたベルトルテ公爵邸で大好きなアンジェリーナ様をお守りすることはできませんでした。私も連れてって欲しかった……」


マリアは最初、身元がわからないことでベルトルテ公爵邸で肩身の狭い思いをしていたそうだ。
しかしアンジェリーナがそばに置いてくれて、マリアの面倒を見てくれたらしい。