「今日はもう遅い。ゆっくりと体を休めてくれ」

「はい。何から何までありがとうございました。リュドヴィック様も、ゆっくりと休んでください」

「…………。失礼する」


リュドヴィックはチラリとディアンヌを見ると侍女と部屋から出て行った。
一人になった部屋で、ディアンヌはズキズキと痛む足を撫でた。
けれどとりあえずはメリーティー男爵家の未来が繋がった安心感でいっぱいだった。

(今日はすごい一日だったわ……)

ディアンヌは広すぎるベッドでソワソワしつつ、そのまま瞼を閉じて眠りについたのだった。


──眩しい朝の光を感じて目を覚ます。

自分が寝坊したことに気がついて慌てて顔を上げた。

(すぐに朝食を作らないと……!)

ベッドから起きあがろうとするものの、足が床に触れた瞬間、あまりの痛みに悲鳴を上げた。
息を止めたディアンヌにじんわりと冷や汗をかく。
一気に現実に引き戻されたようだ。

(い、痛すぎるっ! 筋肉痛もひどい……足が引きちぎれそうだわ)

ディアンヌが痛みに悶えていると、いつもの格好ではないことに気付く。

(わたしは昨日、パーティーで……ここはベルトルテ公爵邸だわ!)

そんな時、扉をノックする音が聞こえた。
ディアンヌはまたカトリーヌが来たのかと思い、身構えてしまう。


「ディアンヌ様、お目覚めですか?」

「は、はい!」


しかし明らかに優しい声が聞こえてディアンヌは肩の力を抜いた。