パーティーもお茶会もほとんど出たことがなく、これだと半年後に控えた社交界デビューも無理だろう。
悩んだディアンヌは、学園の時に友人だったシャーリー・カシスを頼ることにした。
ワインレッドの髪はクルクルに巻いて降り、吊り目でブラウンの瞳。
昔からおしゃれで大人びていた。
ディアンヌと同じ男爵令嬢だった彼女は、学園で十二歳から十五歳まで一緒にいた仲のいい友人だ。

しかしカシス男爵は領地内にある鉱山から宝石を掘り当てた。
カシスと名付けられた赤い宝石は王都で流行っているそうだ。
その宝石が高値で売れたため功績を認められたことや、爵位を金で買い伯爵となったのだ。

それが一年前のこと。
そこからシャーリーの振る舞いは一変してしまった。
ディアンヌと距離を置くようになりシャーリーは友人も変えて身なりも派手になってしまう。
連日、パーティーやお茶会に行っているそうで関わる機会が少なくなる。
だが、ディアンヌはシャーリーのことを今でも友だちだと思っていた。

シャーリーと仲良くなったのは、メリーティー男爵領とカシス男爵領とが隣にあったことが大きい。
その下には二つの領を合わせても、まったく足りないくらい大きなベルトルテ公爵領がある。
そしてベルトルテ公爵領の南に王都があるのだ。
ベルトルテ公爵家は王家を宰相として代々支えている。

三年前、先代ベルトルテ公爵は表舞台を退いた。
それは国王が変わり、戴冠式が行われたからだ。
そのタイミングでベルトルテ公爵が宰相に任命されたそうだ。