「ピーター様はとても元気なのですね」

「……ああ、そうだな」


静まり返る部屋の中、リュドヴィックが深刻な表情で口を開いた。


「ピーターのことなんだが……」


リュドヴィックの話によると、ピーターは彼の姉の子どもなのだそうだ。
それを聞いて驚いていた。
社交界に出ずに、情報に疎いせいかピーターはリュドヴィックの子だと思い込んでいたからだ。

六年前、ベルトルテ公爵邸から駆け落ち同然で出て行ったリュドヴィックの姉、アンジェリーナ。
当時は十八歳だったそうだ。
彼女は置き手紙と共に忽然と姿を消した。
アンジェリーナは遠く離れたゼリル王国の四十歳も歳が上の皇帝に身染められたため、ゼリル王国の元に嫁ぐことが決まっていたそうだ。
彼女が消えたことで騒ぎになったそうだが、そのまま姿を現すことはなかった。
ベルトルテ公爵はその尻拭いに追われたそうだ。

それから時が流れて六年後、辺境の地で悲惨な事故が起こった。
なんと馬車が崖から落ちてしまったのだ。
御者も母親は身元がわからないほど無惨な状態だったが、母親は子どもを守り、なんとか子どもは生きながらえた。
そして同時にベルトルテ公爵邸の家紋が入ったロケットペンダントやアンジェリーナがリュドヴィックに宛てた手紙が見つかった。