ディアンヌのために娼婦が着るようなドレスを、侍女にわざわざ購入させた。
毒々しい濃い紫色とペラペラの生地に、はしたないほどに肌を露出させた最悪なものだ。

ディアンヌに自慢するためにクローゼットに案内する。
シンプルなドレスはないかと言うディアンヌの言葉には腹が立って仕方なかった。

(このわたくしが、そんな貧乏臭いドレスを持っているわけないじゃない!)

シャーリーが怒りを露わにすると、ディアンヌは一歩引いた返事をした。
それにはシャーリーは満足だった。
やはりメリーティー男爵家は相当、追い詰められているらしい。

そして計画通り、安い娼婦のようなドレスを渡す。
ディアンヌの引き攣った顔を見ていたら心がスッとした。
返すから、と言うディアンヌにシャーリーは腹を抱えて笑うのを堪えていた。

(こんなドレスとも呼べないクソみたいなもの、返されたっていらないわ!)

それから明らかにディアンヌが履き慣れなそうなハイヒールを渡す。
これはディアンヌが大恥をかいて二度と社交界に出られないようにするためだ。
ディアンヌはペラペラなドレスとハイヒール、そしてパートナー同伴で行かなければならないパーティーの招待状を渡す。

(これでディアンヌとメリーティー男爵家の評判は地に堕ちる。没落して、二度とわたくしの前に姿を現すことはないのよ)

──パーティー当日。
シャーリーがジェルマンと、友人たちと会場に入るとディアンヌはもうやらかした後だそうだ。
『場違いな娼婦が誰かを待っていた』
そんな話を聞いたシャーリーは立っていられないほどに笑うのを堪えていた。

シャーリーの予想通り、ハイヒールを履きこなせずに長い裾を踏んで転んだそうだ。
思いきり頭もぶつけてひどい有様で医務室に運ばれたらしい。