リュドヴィックの方が有利かと思いきや、ロウナリー国王の方が上手のようだ。
ディアンヌは成り行きを見守っていたが、ふとリュドヴィックと目が合う。
真剣な表情のリュドヴィックのディアンヌは吸い込まれそうなロイヤルブルーの瞳から目が離せなかった。
彼はソファに座っているディアンヌに視線を合わせるように膝をつく。
シルバーグレーの長めの前髪がサラリと流れた。


「ディアンヌ嬢……申し訳ない」

「いえ、わたしは大丈夫ですから!」

「ドレスも靴も新しいものを買おう。それと今日はピーターを助けてくれてありがとう。改めてお礼を言わせてくれ」

「いえ、こちらこそ感謝しております。メリーティー男爵家を救ってくださり本当にありがとうございます」

「お礼なら陛下に言ってください」


リュドヴィックは丁寧に話しているのだが、背後にいるロウナリー国王は明らかにイライラとしている。
エヴァもロウナリー国王の様子やリュドヴィックを交互に見ながら、戸惑っているようだ。


「あー……もう十分にわかった」

「……?」


ロウナリー国王の一言に三人の視線が集まる。


「リュドヴィック、命令だ。ディアンヌと今すぐに結婚しろ」

「は……?」

「……っ!?」


リュドヴィックとディアンヌが驚きに言葉を失っている。
そんな中、ピーターの気持ちのよさそうな「ディアンヌ……ここにいて」という寝言が静まり返った部屋に響いたのだった。


「ディアンヌ、リュドをよろしく頼む!」

「へっ……!? は、はい!」

「メリーティー男爵領については任せておけ!」


ロウナリー国王はそう言って豪華に笑った。
ディアンヌはロウナリー国王の言葉を深読みして考えていた。

(つ、つまりはメリーティー男爵領を救うためには、リュドヴィック様と結婚しろと……そういうことよね!?)