ディアンヌは少年を怖がらせないようにと、ハイヒールを脱いで視線を合わせるように屈む。


「君、どうしたの?」

「……」

「もしかして迷子かな?」

「……」


少年はディアンヌの声に何も返事をしない。

(ライ、ルイ、レイと同じ歳くらいかしら?)

答えてくれるのを待っていたが、少年の目からはポロリと涙がこぼれ落ちる。
困惑したディアンヌは額に触れると、先ほどぶつかったところが大きなコブになっていた。
どうにかして不安を取り除きたいと思い、ディアンヌは少年に声をかける。


「あのね、さっきこのドレスの裾を踏んじゃって頭ぶつけて転んじゃったの。見て見て! 大きなたんこぶできているでしょう?」


ディアンヌは前髪を持ち上げて見せる。
どれだけ強くぶつけたのだろうか。
額がボコンと大きく膨らんでいた。
すると少年はディアンヌのたんこぶを見つめながら目を丸くしている。


「……そこ、痛いの?」


少年が口を開いて、ディアンヌに問いかける。
やっと少年が話してくれたことに安堵していた。


「ふふっ、もう大丈夫だよ!」

「……そっか」