──三日後

パーティー会場を見上げながら、ディアンヌは呆然としていた。
街の宿で着替えてきたのだが、やはり髪も下ろすだけ。
メイクもほとんどしておらず、アクセサリーもないからか完全にドレスも着られている状態だった。
何より履き慣れないハイヒールで歩きづらい。
ディアンヌはよたよたと階段を上がっていくのだが、注目を集めていた。

(場違いなのはわかっているけど、家族のためにがんばらないと……!)

なんとか会場に辿り着いたものの、何をすればいいかわからずに緊張していた。
社交界デビューも済ませておらず、パーティーにも出席したことないため、やることもわからない。
今になって後悔が押し寄せていた。
コソコソと何かを話されてはいるが、いい意味ではないことだけはわかる。
仕方なく壁際に移動して、周囲の様子を眺めていた。

(どう見たって、場違いよね……)

親しげに話す人たち、笑い声が遠くから聞こえる。
結婚相手を探しにきたはずなのに、今のところ何もできないままだ。

(みんなの前であんなことを言ったけど、わたしはこのパーティーで結婚相手をみつけることができるのかしら……)

心細さや緊張、不安があり思考がマイナスに傾いていく。
そんな自分を叱咤するために首を横に振る。
ディアンヌがどうにかこの状況を上げようと、一歩踏み出そうとした時だった。

視界がグルリと一回転する。
ゴチンと、頭に激しい痛みと共に重たい音が聞こえた。
どうやらハイヒールでドレスの裾を踏んでしまい、倒れた拍子に頭をぶつけてしまったようだ。
クラリと目の前が歪んでいく。
そのままディアンヌは意識を手放した。


* * *