「わたしにできることはなんだってやりたいの。ライやルイ、レイたちのこともあるし、ロランを学園に通わせてあげたいから」

「だ、だがこんな高級そうなパーティーに参加するならドレスも必要なんだぞ?」

「うちにはそれすら買うお金がないのよ……?」


涙を流す母を抱きしめながらディアンヌは首を横に振る。
母の気持ちが痛いほど伝わってくる。


「大丈夫よ……ドレスや靴は今日、借りてきたの。汚さないように気をつけて、ちゃんと返すつもりだから」

「……ディアンヌ」

「姉上、僕たちのためにそこまで……」

「ごめんなさい、ディアンヌ」


ディアンヌは目に涙を溜めるロアンや両親を抱きしめる。
メリーティー男爵家の命運がかかっている。

三日後に王都で開かれるパーティーの招待状を見つめながら、ディアンヌは髪を梳いていた。
癖がある髪は絡んでいる。
そこで相手を見つけられるかはわからないが、ここまできたらやるしかないのだ。

(……がんばらないと!これが最初で最後のチャンスなんだから)

最後ならばできる限りのことをしようと、ディアンヌは自らが少しずつ貯めていたお金をすべて使い王都に向かうことにした。
ここで動かなければ、ディアンヌは一生後悔することになる。
涙ぐむ家族に見送られながら、ディアンヌは出かけたのだった。