「シスターミラどうしました?」
「あっすみません院長起こしてしまいましたか?」
奥の部屋からゆっくりと歩きながら来たのはこの孤児院の院長先生
50代半ばの小柄で少しふっくらとした優し気な雰囲気のこの方は先代王弟殿下の未亡人カトリーヌ様
先代王弟殿下が亡くなられてからこの孤児院の院長に就任
なり手のない院長に自分がなりたいと手を上げてくださった女神のような方
世が世ならわたしのような下々の者が会えるはずもない方なのだがとても気さくで明るい方だ
わたしは大好きで子供好きな彼女をとても尊敬している
一度寝ると余程のことがない限り起きない彼女が珍しいそんなことが頭をよぎる

「赤ちゃんの声がしたような気がして・・・・違いましたか?」
「はい泣き声がして出てみたらこの子が・・・・・・」

私が抱いている赤ん坊を見ると熱があるのがわかったのか真っ赤な顔をしているのに驚き一瞬息を呑んだ

「まあ!!もしかして熱があるんじゃないの?顔が真っ赤よ!でも・・・・」
「気が付きましたか?」
「これは・・・・・呪い?じゃないわね?なにかしら」

院長が赤ん坊のチョーカーを覗き込みながら額に手を置くと見つめたまま何か考えているよう

「院長!なんだかやっかいな感じがするので取りあえず明日教会で治癒師に治療してもらってきます!その時にでもこのチョーカーのこと聞いてきますね」

わたしがそう答えると院長は柔らかい笑みを浮かべている
まさかこのやりとりを全部赤ん坊が覚えていたなんてわたしは思ってもいなかった