お嬢様お許しください・・・・

少女は心の中でそう呟きながら息を切らしただひたすらに走っていた
その足取りは早いとは言えずに途中何度か転びそうになる
でもなんとか転ばずにいられたのは腕の中に赤ん坊がいたから
ミルクの匂いがほんのりしてお腹が一杯なのかよく眠っていた
こんなにばたばた走っているのにまったく起きる気配がない
だからなのだろう粗末な木綿のワンピース姿の少女が思うのはこの赤ん坊を出来るだけ遠くに捨てることだけ

ごめんなさいお嬢様・・・・・わたしにはこうするしかないんです


再び心の中でそう呟くとため息をひとつついた
肌寒いというのに走ったせいか少し暑い、どれくらい走ったんだろう

「く・・・・・苦しいちょっと休憩」

大きな石に座り込むと辺りを見回す、周りはうっそうとした森が広がっていた
空の月明かりがなければ夜遅くにこんな森の中なんて普段だったら絶対入らなかったはず
この辺りでいいかな・・・・?
少女は赤ん坊を大きな石の影にそっと置いた
だって疲れてしまったし夜の森はなんだか怖いし役目はもう果たしたよね?
少女の役目は必ず赤ん坊を捨ててくること、それはそれは厳重に言い含められていた

「ふえっ・・・・」

誰もいない森の中に赤ん坊の声が一瞬響いた
少女はこんなところにすてるなんてという罪悪感が頭をよぎる
外は肌寒く薄いワンピース姿の少女は身体を震わせた
お嬢様寒いよね・・・・・でもどうしようもう夜も遅いし早く帰りたい
でも遅くなったら侍女長さんに怒られる
でもでも・・・・森の中に置き去りなんていくらなんでもそんなことあたしには出来ない

少女は赤ん坊を抱えると再び歩き出す
彼女は森の中を一直線に駆け抜けていった