「多分、これでもう大丈夫なはずだよ」
 冴木さんは、早くも黒電話の修理を済ませてくれた。
「ありがとうございます!」
 修理代を支払うと、
「もし、まだ調子が悪かったら、いつでも持ってきて。次回以降は代金要らないから。名刺を渡しておくよ」
 店を出ると、バイクのミラー越しに、私を見送る冴木さんが小さくなっていった。
「ただいまー!黒電話、直してもらったよ!」
 果たして、ちゃんと使えるかどうか試したところ、大丈夫だった。
「これ、どこで直してもらったの?」
「同じ町内の、なんでも修理屋さん。冴木さんって人、会ったことない?」
「冴木さんって、まだ若い男の人?」
「そうそう」
「あのお宅も、今は彼ひとりだけになっちゃったみたいね。感じのいい青年っていう印象よね」
 ひとりだけになっちゃった、という言葉が少し気になったが、祖母はそれ以上のことは言わず、私も尋ねなかった。