OBとはいえ、初対面の年上男性を相手に、こんなにリラックスしている自分がとても不思議だ。
 こうして雑談しながらも、彼は手際よく修理してくれている。
 ついつい、手元にばかり目を奪われていたが、おもむろに彼が端正な顔立ちの人だということに気付く。
「私、あずな。同じ町内なの」
「僕は冴木。自宅もここなんだ。ここから高専まで通学となると、そこそこ遠いよね?僕は寮生活だったよ」
「そうね。でも、高齢の母と二人暮らしだし、バイク通学は気に入ってるから」
 雪が積もれば、電車を乗り継いで通うしかないが、早い時間に家を出るので、ラッシュには巻き込まれない。
「同じ町内なのに、一度も会ったことがないね」
「えっと……私、町内会関係は母に任せてるし、この町は結構、範囲広いじゃない?」
「確かにね」
 それ以上、突っ込んで聞かれなかったことに安堵する。