「お母さんって……眼鏡かけてた?」
「うん。あれは鼈甲だよね。長年使ってきたんだろうなって。頂いたマドレーヌ、あずなちゃんも一緒に食べよう」
「そうね」
 よかった……。
 祖母は、自分自身のことを“あずなの母”と名乗ったようで、冴木さんもその言葉に疑惑ひとつ抱いた様子はない。
 二人で他愛ない話をしながらお茶をしていた時、
「あずなちゃんのお母さん、優しい雰囲気の人だね」
「うん。母は本当に優しいよ。私は果報者だと思う」
「そっか。それでも、淋しさを感じる?」
 質問の意図が判らず、戸惑ってしまった。
「あずなちゃん。時々、凄く淋しそうなのはどうして?」
「な……何を言うの?私、淋しくなんかないよ!」
 動揺を隠しきれず、つい声が大きくなってしまった。
「ごめん。変なことを聞いてしまって」
「違うの!冴木さんは何も悪くないから!ごめんなさい……」