「おー!流石だねぇ、ありがとさん!」
 台風のように、おじさんは去って行った。
「冴木さん。広告出したり、取材受けたりしないの?情報誌に載ったら、かなりの人気になりそうなのに」
「今でも仕事の依頼は結構来るし、お客さんが増えても、一人ではとても応対しきれないからね」
「ごめんなさい、いつも邪魔してしまって……」
 流石の私も、営業妨害だったかと反省したが、
「いいんだよ。一日中、誰とも話さないでモノとだけ向き合う日々は、確かに気楽だったけど、あずなちゃんが来なくなったら、きっと淋しくなる」
 そんな思わせぶりなことを言うのだ。
 思わせぶりも何もないか。
「あ、そうそう。今日の昼間、あずなちゃんのお母さんがお菓子を持って来てくれたんだよ」
 “お母さん”という言葉に、つい、激しく動揺してしまった。