冴木さんの人柄の良さも勿論そうだが、それだけではない気がする。
 トランジスタラジオを直してもらった私は、それからも、ちょっとでも家電製品の調子が悪いと“なんでも修理屋”に持ち込むだけでなく、苦手な数学を教えてもらうなど、理由をつけては、店に入り浸るようになった。
 そんな厚かましい私に、冴木さんは迷惑そうな顔を見せることもなく、いつも優しく接してくれた。
「冴木ちゃーん、パソコンが壊れちゃったよ!」
 店内にやって来た見知らぬおじさんに、黙って軽く会釈すると、
「おや、邪魔しちゃったかな?冴木ちゃん、色っぽい未亡人に興味なかったのは、元気のいい娘が好みだったんだねぇ」
 見た目だけで元気だと決めつけられ、思わず苦笑いである。
「何言ってるんですか。彼女は近所の子で、後輩ですよ。パソコン見せてください。なんだ、壊れてませんよ。これをこうして……」