「あずなちゃん、電話の調子がおかしいの。音が聞こえないのよ」
 今の時代、なかなか珍しい黒電話の受話器を耳を当てながら祖母がぼやく。
 祖母は補聴器を使っているので、そちらの不具合かもしれないと思いつつ、受話器に耳を当てみたところ、確かに全く音がしなかった。
「ホントだ…。この電話、何十年前のものだっけ?」
「少なくとも、もう50年は経ってるわね」
 50年!?
 いくら、祖母も私も、古いものは直して使いたいタイプであっても、流石にもう厳しいかもしれない。
 しかし、時代と共に、どんどん新たな電話が登場しようとも、祖母にとっては、電話イコール黒電話なのだ。
「おばあちゃん、コレ直して使いたいよね?直したくても、どこの店もすぐに新しいものを売りつけようとしてくるからなあ……」
 祖母だけでなく、私もとことんアナログな暮らしを送っている。