「ごめん、君みたいな地味な子無理なんだよね」

 2月14日、バレンタイン。
 世間が恋だ愛だと沸き立つ中、私は失恋した。

 父が家にいない間を縫って作った手作りのブラウニーは、大好きだった若宮先輩の口に運ばれることなく、泥で汚れた雪の上に無残にも砕け散った。

——どうして?あんなに親切だったのに……

 私、橘紗里奈。高校2年生。
 確かに私は地味かもしれない。けれど、若宮先輩はそんな私にも親切にしてくれた。
 溢れる涙を誤魔化しながら、私は学校を飛び出した。

 どこに行くでもなく、ただ走って、ひたすら走った先に辿りついたのは駅前の商店街だった。