しおれたように俯けば、カインは私が泣いてしまったと思ったようで、面倒くさそうに舌打ちをした。

「チッ。まったく、メソメソしやがって。仕方ない、ほんの少しだけだからな。絶対に落とすなよ! いいか、絶対だぞ!」
「ありがとうございます、カイン様」

 私は微笑んで立ち上がり、両手で慎重に剣を持ち上げて重さを確かめてみる。

(あれ? そんなに重くない。これなら問題なく振れそう)

 カインに背を向けてゆっくりと剣を引き抜き、振り返って(さや)をテーブルの上に置けば、先程まで得意顔で笑っていた彼が目を丸くして私を見ていた。

「嘘だろう……? ど、どうして……? 女のお前が、ありえない……」
「カイン様。この剣、少しお借りいたしますね。決して落としたりしませんから」

 私は呆然(ぼうぜん)とするカインを置き去りにして庭に下り立つと、教わった通りに剣を振りはじめる。
 そして最後に剣先をピタリと止めれば、その直線上にカインの姿があった。

 わざと狙ったわけではなく距離もかなりあるのに、彼は「ヒィィッ!」と悲鳴を上げて椅子から転げ落ちてしまう。

 まさかそれほど驚くとは思ってもみなかった私は、急いでテラスに戻り剣を鞘に収めてから彼に歩み寄った。