そして迎えたお見合いの当日。
 同い年のお相手カイン・チェスター侯爵子息は、品定めするかのような目つきで、私のことをじっと(にら)みつけていた。

 だから彼の第一印象はあまりよくはなく、無口で怖そうな男性としか思えない。

 カインの父親であるチェスター侯爵の話を聞くと、私を選んでくださった理由は、豊かな父の領地に興味を持ったのと、カイン本人が私の容姿を気に入ってくれたからのようだった。

 両家の親が退室してふたりきりになると、それまで無愛想に黙り込んでいたカインがなぜか上機嫌に語り出す。

 その内容は自慢ばかりだったけれど、私は嫌な顔をせず淑女(しゅくじょ)の笑みを浮かべながら、ひたすら聞いていた。それなのに──。

「おい! お前、なぜ黙ったままなんだよ!? 本当につまらない奴だな」

 今まで楽しそうに話していたのに、急に不機嫌になって(ののし)ってくるカインに、私は戸惑ってしまう。
 言葉を失い固まっていると、カインがこれ見よがしに深くため息をついた。

「はぁ。この俺が相手をしてやっているのに、()びを売って楽しませようという気にはならないのか? まったく。気の利かない女だ」