「ああっ……顔立ちもお美しいけれど、スラリと背が高くて、去ってゆくお背中も素敵……。一度でいいから、ルーファス殿下とお話をしてみたいわ 」
「あら、貴女。お話を されたことがないの? わたくしはありますわよ。低く艶やかなお声がとても魅力的でしたわ」
「へぇ、そうなのですか。それで、どのようなお話をなさったの? まさか、挨拶を交わしただけなんて言いませんわよね?」
「そ、それは……。だってルーファス殿下は紳士的な方ですから! ペラペラ女性とお話をなさるような男性ではございませんもの、挨拶だけでも十分貴重なのですわ!」
「おふたりとも、言い争いはおやめになって。そろそろ謁見のお時間になるけれど、ルーファス第二王子派の貴女たちは、レオナルド王太子殿下の列には並ばないのよね?」

 言い争いを繰り広げていた令嬢たちは途端に口論をやめ、気まずそうに「いいえ、並びますわ……」と呟いた。

 令嬢たちが連れだって立ち去ると、隣にいた年配の貴族たちが彼女たちの後ろ姿を眺めながら、眉をひそめて談笑を再開する。