そうして迎えた王宮舞踏会の当日──。
 受付に招待状を出して大広間に足を踏み入れると、そこには夢のような豪華絢爛な光景が広がっていた。

 見上げるほど高い天井に、眩いばかりの輝きを放つシャンデリア。
 光に満ちた黄金のホールの中央で紳士淑女が踊りを楽しみ、壁際の休憩スペースでは貴族らがワイングラス片手に談笑している。

 社交界に(うと)く、場の雰囲気に気後れしてしまった私は、悪目立ちしないように壁際に寄って佇んだ。

「まぁ! ルーファス殿下は、謁見(えっけん)前にご退席なさってしまうのね。めったにお目にかかれないから楽しみにしていたのに、残念ですわ」

 ふと聞こえてきた令嬢たちの声に導かれるようにして王族席へ目を向ければ、奥の扉へと向かっていくルーファス第二王子の後ろ姿が見えた。