社交界にはまったく興味がないから、できることなら行きたくないけれど、【特段の事情がない限り出席をせよ】との王命が記されているから逃れようがない。

 招待状を眺めて何度もため息をつく私の様子に、ディランが不思議そうに首を傾げた。

「さっきから憂鬱な顔をして、どうしたの?」
「王宮舞踏会、特別な理由がない限り欠席は認められないって」
「ふぅん、そうなんだ。でもその舞踏会、レオナルド王太子殿下の婚約者探しの場だって噂だよ。もしかしたら、童話みたいに王子様に見初められて恋に落ちる、なんてこともあるかもしれないだろう? やる気出しなよ」
「やる気なんて無理よ……。ディランも三年前のカイン様との縁談を覚えているでしょう? お相手が侯爵子息でも大変だったのに、王族だなんて考えただけでも恐ろしいわ」
「あ~あ、またそんな夢も希望もないようなことを言って。我が姉ながら欲がなさすぎだよ」
「ディラン、いいことを教えてあげる。すぎた欲は、身を滅ぼすのよ」
「えぇ? なんだよ、それ?」

 なにを言っているのか分からないという顔をするディランに微笑み返して、私は舞踏会に出席するための準備を始めたのだった。