私たちを乗せた馬車は王都の街中を颯爽(さっそう)と走り、なぜかグレイス女学校を素通りして、閑静な貴族街にあるオルティス伯爵家の別邸に到着した。

「先生? あの、どうして私の家に……?」
「貴女は自宅謹慎(きんしん)になりました。今後の処遇は改めて知らせますので、降りなさい」

 厳しい口調で命じられて降車すると、馬車は私を置き去りにして行ってしまった。

 急な展開に思わず呆然と立ち尽くしてしまうけれど、こんな姿を誰かに見られたら、また悪評を立てられてしまうかもしれない。
 足早に屋敷へ向かって歩き出すと、外にいた男性使用人がこちらに駆け寄ってきて、おずおずと尋ねてくる。

「当家になにかご用でしょうか?」
「お父様に話があるのですけど、今、屋敷にいるでしょうか?」
「お父様? ……もっ、もしかして、そのお声はジュリエお嬢様ですか!?」

 私が頷くと使用人は驚いて屋敷の中へと消えていき、知らせを受けたのだろう、慌てた父が姿を現した。

「ジュリエッ!? なっ、なんだ、その格好は!? なにがあった? 大丈夫なのか? 学校はどうしたのだ?」
「お父様、ごめんなさい。私、自宅謹慎になってしまいました」

 矢継ぎ早な質問に私が端的に答えると、父は玄関先で解決できることではないと悟ったようで、先程よりも幾分か冷静さを取り戻した。

「そう、か……。まずは身なりを整えてきなさい。話はそれから聞こう」