「できることなら、私は自分の気持ちを優先したいな。もちろん家族の期待には応えたいけれど、一度きりの人生だもの。自分の思う通りにしないと、後悔すると思う。それに私が選んだ道なら、家族はきっと応援してくれるはずだから」
「そうか……そうだな。後悔するのは、嫌だよな」

 少年はどことなく寂しげに呟いた後、下を向いて口を閉ざしてしまった。

(えっと、私、なにか気に障るようなことを言ってしまったのかしら……? そんなに深刻に考え込んで……まっ、まさか、泣いちゃった!?)

 心配になった私は、弟のディランを慰める時のように優しく語りかけてみる。

「ごめんなさい。お姉さんが余計なこと言ってしまったわね。今の話は忘れてね。それじゃあ、なにか他に楽しい話でもしましょうか? お歌でも歌う? それとも、かくれんぼがいい? 好きな方を選んでもいいのよ」
「なぜお前が姉なのだ? 子供扱いをするな」

 顔を上げた少年は泣いておらず、偉そうな口調で言い返してから、フッと表情を緩めた。