でも冷静に考えてみれば、確かにそうだよね……。
 バケモノに見間違えられるような顔面崩壊の令嬢がニヤリと笑っていたら、それは間違いなく不気味よね。

 ごめんなさい! 目の前の美少年!!
 でも、貴方も動揺していると思うけれど、私も内心少し……いいえ、すごく慌てふためいているの。
 だって、変態として通報されるか否かの瀬戸際なのだもの!!

 焦りすぎた私は、この場をどうにかやり過ごすための言い訳を考えはじめる。

「あのぅ。驚かせてすみません。お、落ち着いて話を聞いてくださいね。実は私、あのぅ……そのぅ……バケモノじゃなくて……」
「なにを口ごもっているのだ。バケモノじゃないなら、いったい何者だ」
「わ、私、そのぅ……人間じゃないから、不審者でもなくて……」
「はぁ? 人間じゃないなら、なんだというのだ?」
「私……ええっと……要するに、よっ、よよ、よう、妖精、なのです……」

 消え入りそうな情けない声で告げた直後、その場がシーンと静まり返った。
 少年の『お前はいったい、なにを言い出すのだ?』というような呆れた眼差しが、私の心にグサグサと容赦なく突き刺さる。