私は自分自身に言い訳をして、近くの扉からこっそりと中庭に出てみた。

「うわぁ、とっても暖かい!」

 太陽の光を全身に浴びて暖を取りながら、目の前に広がる庭園を見回すと、辺り一面には色鮮やかな草花が咲き誇っている。
 爽やかな水しぶきを上げる噴水の近くには、純白の支柱に青い円形屋根のガゼボがそびえ立っていた。

「なんて素敵な景色なのかしら……」

 夢心地で美しい庭園を眺めていると、近くからカサッ、カサッと、草を踏みしめる足音が聞こえてくる。

 音のする方を見ると、そこには息を呑むほど美しい少年が立っていた。

 少しウェーブがかった金色の髪が、ふわりふわりと風になびき、端正な顔立ちに華やかさを添えている。
 すっきりとした輪郭に、透き通るような綺麗な肌。
 こちらを見つめる大きな瞳は、海を思わせる澄んだ青色。

 身長は私より頭ひとつ分くらい低く、体つきも華奢(きゃしゃ)
 見た目から推測すると、多分年下だと思う。

 私と同じように道に迷ってしまった、どこかの貴族令息かしら?