「あの……お言葉を返すようですが、許可なく勝手にこの部屋を出るわけには……」
「はぁ? このわたくしに口答えするの? まぁ、呆れた! 田舎者はこれだから嫌なのよ。あのねぇ、この学校でわたくしの命令は絶対なの。ちょっと、貴女たち! ボーッとしていないで、早くこの女を追い出しなさい!!」
「はっ、はい! ロザリー様!」

 取り巻きの令嬢たちがロザリーに命じられるまま私を取り囲み、強引に引きずって部屋の外に押し出した。

 廊下に尻餅(しりもち)をついた私は急いで立ち上がり扉を開けようとするも、内鍵をかけられてしまったみたいでビクともしない。

 ひどい身なりを誰かに見られる前に一刻も早く中に戻りたいのに、この様子だと先生が来るまで入れそうになかった。

 ずぶ濡れだけど喉はカラカラ。日の当たらない寒い廊下で私は途方に暮れる。

「はぁ、なんでこんなことに……クシュン! ううっ、寒い……」

 口元に当てたハンカチを見れば、紅茶の色の他にも赤や黒が混じり合い、ひどく汚れていた。

(これって……。え? まさか、お化粧? じゃあ、か、顔! もしかしてグチャグチャ!? どうしよう……)