うわぁ、どうしよう……目を開けるのが怖い……。
 さりげなく違う席に移ろうかしら?
 いいえ、それじゃあ逆に角が立って、ロザリーを刺激することになるかもしれない。

 頭を高速回転させて色々と考えてみるけど、これだという名案が浮かばず、私は結局その場でおとなしくしていることにした。

「みなさん、(そろ)ったみたいですね。それでは、お茶会を始めてください」

 先生の言葉を合図にして、賑やかな話し声やティーカップがソーサーに当たる音などが辺りに響きはじめる。
 紅茶のよい香りがしてきて、私はほんの少しだけ顔を上げて周囲の様子を窺ってみた。

 すると驚くことに、隣の席に座っていたのはロザリーで、香り高い紅茶とおいしそうなお菓子を堪能しながら楽しそうに談笑している。
 めまいも治まってきたから乾いた喉を潤したいけれど、わざとか偶然か、ティーポットは私が手を伸ばしても届かないほど遠くに置かれていた。

「みなさん、次の鐘が鳴った時に帰りますからね!」

 先生がそう言い残して退室した途端、お淑やかなロザリーの口調がガラリと変わった。