人混みの中を、ふらつく身体ではぐれないように気をつけながら歩き続ける。

 お茶会の会場は学校ごとに異なるようで、徐々に人の波は枝分かれするように別の方向へと流れていく。
 そうして最終的に廊下を歩いているのは、グレイス女学校の生徒だけになっていた。

「さぁ、みなさん、着きましたよ。お部屋に入ったら座って待っていてください」

 指示に従って空いている席に腰を下ろして休んでいると、不意に甲高い声が私の耳に飛び込んできた。

「見つけましたわ、ロザリー様! 野蛮令嬢はあそこです!」

 なんだか、ものすごく嫌な予感がする……。
 ただでさえ具合が悪いのに、さらに面倒事にまで巻き込まれたくない私は、俯き目を閉じてどうかお願いだからこっちに来ないで……と、ひたすら祈った。

「ねぇ、みなさん。わたくしたち、この方と同じテーブルにいたしましょう」
「ええ、ロザリー様。そういたしましょう!」

 目をつむっているから見えないけれど、近くから聞こえてくる椅子を引く音で、ロザリーと取り巻きの令嬢たちがこのテーブルを占拠したことが窺える。