「はい、お父様のおっしゃる通りにいたします」
「そうかそうか。では、さっそく手配しよう」

 それからほどなくして、王都にある全寮制の名門グレイス女学校から入学の許可が下りたと父に伝えられた。
 もし、この場に弟のディランがいたら『男子禁制の女学校って、どんなところなのかなぁ~』と、好奇心に目を輝かせていたに違いない。

 でも残念なことに、弟よ。
 女の園はキラキラの花園じゃなくて、ドロドロの泥沼みたいなところなのよ……。


 それから数日後の登校初日──。
 女学校の廊下を歩いていると、さっそく嫌な視線が突き刺さり、クスクスという嘲笑が耳につく。

「ねぇ、見て。あちらにいる方、例の野蛮令嬢じゃない?」
「あら、本当だわ。あの子、侯爵子息に剣を突きつけたのでしょう?」
「そうなの? きゃあっ! 怖ぁ~い!」

 聞こえよがしに私の悪口を言いながら、楽しそうに後ろをついてくる暇なご令嬢たち。
 名門校でもこういう人っているのねと思っていると、彼女たちは私の反応が気に入らなかったのか、急に金切り声を張り上げた。