挫折

哲雄の新しい生活が始まり、仕事にも慣れ始めた矢先、思わぬ挫折が訪れた。リハビリセンターでの初めてのプロジェクトは、重度の障害を持つ患者の支援を行うもので、哲雄は自分の経験を活かして最大限のサポートを提供しようと意気込んでいた。しかし、実際の現場では予想以上に難しい状況が待ち受けていた。
ある日、担当患者とのコミュニケーションが上手くいかず、彼の不安や恐怖を理解することができなかった。哲雄は何度もアプローチを試みたが、患者は心を閉ざし、彼の言葉を受け入れようとしなかった。失敗の連続で、彼は自信を失っていった。
「どうして上手くいかないんだろう…」哲雄は悩みながら帰路についた。ユカにそのことを話すと、彼女は優しく励ましてくれた。
「哲雄さん、最初から全てがうまくいくわけじゃないよ。大切なのは、その経験から何を学ぶかだと思う。」
しかし、哲雄の心の中には焦りと自己不信が募るばかりだった。仕事を続けることが辛くなり、時には辞めたいと考えることもあった。数週間後、ついにその瞬間が訪れる。上司から呼び出され、「患者との関係をもっと深める努力をする必要がある」と厳しい指摘を受けた。哲雄は頭を下げるしかなかったが、心は折れそうになっていた。帰宅後、ユカにそのことを打ち明けた。「僕は本当に無力だ。もう辞めようかな…」
ユカは真剣な表情で哲雄の目を見つめ、「でも、あなたには支えてくれる人たちがいる。諦めないで、一歩ずつ進んでみて。」と力強く言った。その言葉に少し救われた哲雄だったが、心の中にはまだ重い雲がかかっていた。彼はもう一度、自分の弱さと向き合い、どうやって前に進むべきかを考える必要があった。
挫折を乗り越えるための道のりは、決して簡単ではなかった。しかし、彼はユカの存在を支えに、少しずつ自分を取り戻していく決意をした。