ほらね、やっぱり……。
 我ながら自分の置かれている状況を客観的に分析できていると思う。
 廊下で肩を貸してくれていた同級生ふたりが途中で、私から離れたのでよろけそうになった。慌てて踏ん張って、倒れずに済んだが、なにも言わない彼女たちの視線がある言葉を発している。

 宇良先輩に媚び売ってんじゃねー、と……。

 プイっと背中を向けて、演劇部の部室に戻っていく彼女たちをみながら恐れていた事態に筋トレの時とはまた違う汗が噴き出る。
 宇良先輩に近づく気なんて毛頭ないのに完璧に誤解されてしまった。
 よろめきながら、保健室に向かうべく壁を伝いながら、歩いているとまたつまずいてしまった。

「~~~~ッ」
「大丈夫ぅ―?」
「え?」

 膝を打った痛みに無言で耐えていると背後から声をかけられた。
 誰だろう?
 ナチュラルな癖っ毛に、屈託のない笑顔。男子にしては少し小柄だが、顔がすごく整っている。

「ほら、ボクの肩につかまって」

 頭を下げて礼を伝える。誰か知らないが、助かった。肩を借りながら、反対の手は壁に伝わせているので、どうにか倒れずに保健室に辿りつけた。