『ピンポーン』

 アパートの3階、自宅の自分の部屋に閉じこもっている私はインターホンの音で目を覚ました。
 あれから1週間、家族は心配しながらも何も聞かずに私のことをそっと見守ってくれている。私が自力で立ち直ることを信じて。

 でも、立ち直れないかもしれない。登校してもすでにどこにも居場所がない。
 転校、近くの高校に移るのが私にとっては唯一の逃げ道。だけどそれを家族にいう勇気が今の私にはない。

「はーい」
「こんにちはーarakawaです」

 誰が頼んだんだろう?
 大手ショッピングサイトの配達員らしい。
 インターホンに出なければ置き配してくれたのかな? それとも代引きなのかな?

 ドアを開けて騙されたことに気が付いた。
 宇良先輩と都成先輩……。

「連絡が取れないから来ちゃった♡」

 てへぺろする都成先輩は、たしかに尊いが、そんな先輩の行為を愛《め》でる余裕が今の私にはない。

「常ちゃん、ごめんね家まで来ちゃって」

 宇良先輩……。
 私はこの1週間、自宅に引きこもり先輩のことを考えないように努力してきた。それなのに……。

「ごめんなさい」
「待って」

 ドアを閉めようとしたが、宇良先輩がドアを捕まえるとピクリとも動かなくなった。