「私、実は……」
演劇部をやめる、友人に伝えようとした瞬間。
『ガラガラガラ』
ざわめく教室、無理もない。宇良先輩がお昼休み中に1年の教室に降臨したのだから、
「常《とこ》ちゃん、ちょっといいかな?」
──どうしよう?
なぜ私は宇良先輩に呼び出されたの?
私がなんかしたから、注意とか?
ううん、宇良先輩はそんな人じゃない。
ならば理由はひとつに絞られる。
「イジメに遭ってるってホント?」
やっぱりそういう話が先輩の耳に入っちゃったか?
でも、いくら宇良先輩でも男子ではこの問題は解決できないと思うけど。
それに苦痛を感じてまで、演劇をやり続ける熱意が私にはもうないかも。
「常《とこ》ちゃんの声ってさ」
先輩も気になるのかな?
声についての思い出はぜんぶ暗い過去ばかりで正直、この部分には触れてほしくなかった。
「オレ、大好きなんだ」
「え……」
先輩の紡いだ言葉を私はその意味を理解するのに少し時間がかかった。
「だからオレに考えがある」