今回の活動期間は2週間。本来なら貰えなかったはずの活動期だし2週でも充分。
 カムバック初週を無事に終えてファンサイン会やメディア露出も増えつつ、振り付けの修正や練習で睡眠時間が日々3時間ほどだ。
 体力消耗してきた2週目にはラジオにバラエティーに海外向けインタビュー、疲労が蓄積していた。
 ジウォンやチョルスが毎日応援や賞賛の言葉をくれているのが心の支え。そしてハル先輩からももちろんカトクが送られてくる。

 実は彼のことをシエン先輩に相談した。
 告白されたこと自体私が言ってしまっていいのかと恐る恐る電話して当たり障りのない話から徐々に恋愛話に持っていくつもりが、勘の鋭いシエン先輩はすべてお見通しだった。
 笑いながら「そこまで悩んでる時点で男として好みじゃないんでしょ」と言われて何も返せなかった。

「こんなこと聞くのも変だけど、ユリはモテるでしょ?」

「えっとー......まぁ少しくらいは?」

 どういう話の流れかさっぱりわからない。
 しかしシエン先輩は普段の妹に接するお兄ちゃん風の優しい口調ではなく、冷めた表情が浮かぶような声色。

「この世界にいたら皆んなそれなりにモテるよ。
ハルなんてあんなに甘い顔してるしすっごいモテるんだから」

 私は今、説得されているのか......?

「でもね、ユリみたいな子だっているんだよ。あいつが刺さらないって子。そんな子には何したって効かない。恋愛なんて来るもの拒まず去るもの追わずが一番いいんだ。振るなら遠慮せず振ったほうがいい」

 先輩2人は親友同士だからてっきり私にはハル先輩をお勧めしてくるとばかり思っていた。
 それに、なんだか初めて見る先輩の一面。
 見ないほうがいいものに触れてしまった気がした。

「俺の勘だけどさあ、ユリって少し悪そうな男が好きなんじゃないの?リクヒョン(お兄さん)みたいにちょっとムスッとしてるような男」

「へぇっ⁉︎」

 彼の透視能力に慄き間抜けな声が出た。何から何まで見抜かれている気がして反射的に「そんなわけないでしょ!」って否定することしかできなかった。
 先生の名前が出たのは単なる一例としてなのか、はたまた私が先生を好きだということにシエン先輩が気づいているのか。どっちなんだ!
 しかし深りを入れたら自ら新たな墓穴を掘りそうで黙る他ない。

「ユリは本当にかわいいなあ」

「ば、馬鹿にしてるでしょ!」

「ハルが好きになった理由も分かる。かわいいね。ずっとピュアなままでいて」

「......はい」
 
 そんな会話をして、ハル先輩にも活動が終わってから返事をすると伝えた。心を決めた途端に悩んでいた間のモヤモヤが一気に晴れて、先輩への好意は完全に恋愛以外のものだと確認できた。